友人に営業の練習相手を頼まれて…友情で保険の契約をしようとした女性の体験談。

営業マンの体験談

友人に営業の練習相手を頼まれて…友情で保険の契約をしようとした女性の体験談。

そのころ、私は社会人になって2年目でした。忙しさのあまり、大学時代の友人と疎遠になっていてなんとなく寂しさを感じていたころ連絡があったのが、保険会社に就職した彼女でした。最初は「お互いもう社会人なんだからバーでも行こうよ」と、ずっと彼女が行ってみたかったというバーに一緒に行く程度でした。それが何回か続き、そして「うちの会社に遊びに来てみない?」と誘われるようになりました。

もうそのころには、月1回彼女に会うのが当たり前になっていました。更に「営業の勉強中なの、保険についてレクチャーする練習をしているから、お客さんとして聞いてほしい」と言われ、友だちを助けるつもりで気軽な気持ちで承諾しました。いざレクチャーを受けると、自分の知らなかった知識を、友だちという近しい立場から教えてくれるので、本当に役立ちました。そしてありがたい、という気持ちにもなりました。保険の勧誘はしないから、という彼女の言葉通り、その日はなにも勧誘されず、保険色も少なく、ただ「お金を貯める重要性」を説かれただけでした。彼女の会社は特定の保険会社の保険プランだけを扱っているのではなく、大手の保険会社の子会社ながら、保険を提案する相談所のような会社でしたので、これでこの件についてはとっくに終わったものだと思っていました。

しかし数日後、彼女から保険について提案したいという連絡が入りました。学生時代からの友人でしたし、これで断るのもなんだか居心地が悪かったので、疑いつつも承諾し、ふたたび会社へ足を運びました。ここまでくると、なにか人生相談をしているような、特別な事情を共有しているような気持になっていました。自分の不安なこと、将来の貯蓄について、彼女に相談するうちに、一つの保険を勧められるようになりました。最初は疑問点が多々あり、自分の人生がかかることなのでしつこいくらいに彼女に質問をしました。すぐには答えられないことでも彼女は「勉強してからしっかりと教える」と言ってくれたので、客ながら応援する気持ちにすらなりました。

仕事帰りに何度も彼女の会社に通い、相談をするようになっていきました。心では半ば怪しげに感じながらも、友人なので無下に断ることもできないままの行動でしたが、次第に仕事の疲れを理由に足が遠のきました。彼女の目には、友人としての私ではなく、新人としてのノルマしか写っていないように思えたからです。何度も通いながらも、友情が壊れる覚悟で「考えなおしたい」と伝えました。そして音沙汰はなくなりました。

しかし、それから一か月ほどが経った頃だと思います。保険についていろいろ教えてくれたのに、ノルマに必死になるのは社会人として当然なのに、それを寛容に受け入れられなかった自分が情けなくなり、また友人として会おうという話をしました。彼女は正直に話してくれました。ノルマばかりが頭にあったことを謝罪もしてくれました。もう一度保険に加入することを考えたいと言ったのは、自然な流れでした。そしてすぐに、提案してくれた保険に加入手続きを済ませました。迷いはもうありませんでした。

ところがその一か月後、保険会社から直接加入を断る連絡がきました。仕事のストレスで精神的に疾患を抱えていた私は、心療内科での受信歴を理由に断られました。それを知った友人からも直接、「せっかく加入してくれたのに私の勉強不足でこんなことになってごめん」というお話をもらいました。当初は入れなかったことを残念に思っていましたが、ふたたび彼女と連絡が途絶えた今となっては、加入を断られてよかったと思っています。思えば大学時代、大して仲良くもなく、積極的でもない彼女から連絡がきたことが不自然でした。私は彼女に利用されたのです。しかし彼女の悪意ではなく、偶然のタイミングが重なってしまった出来事だったと思うので、彼女を責めてはいません。

次に保険の加入を考えるとき、動機が感情によるときは考え直そうと思います。保険とは理性で建設的に考えるものだと思います。そういう営業マンのみ、受け入れるつもりです。