広告系の営業担当をやっています。
勤め始めて早10年となりました。
今の会社に入ったきっかけは、
就職活動をしている中で一番先に内定をいただいたのが今の会社であり、
そのタイミングで就職活動をやめてしまったため入社することとなりました。
当時は大卒の男性が入社した場合は、まずは
営業所に配属されて営業を経験するというのが当社の慣習でした。
時代が進んだ今でこそ、入社からシステムの部署に配属になっている人間もおりますが
昔は「男は営業やってこそなんぼ」みたいな風潮がありました。
もちろん私自身もパソコンが詳しいわけもなく、理系でもありませんでしたので営業をやることになりましたが、
営業職は目標達成に応じて報奨金などもありましたので、やりがいもありました。
実際、人としゃべるのは好きでしたし、受注できたときの喜びはひとしおでしたので、数字に追われて辛いことも多いですが、得られるものも大きいと思います。
勤務体系としては朝9時までに出社。9時過ぎの朝礼を経て、準備などを整えたら営業に出掛けます。だいたい夕方位まで活動を行い、営業所に戻ってからは受注した広告などの手配をしてから帰宅するというのが1日の流れです。
だいたい給与としては30万前後。目標達成するとそこに2~3万ほど上乗せされるといった形です。
ボーナスも成績次第ですが、私の場合50万ほどでしたので年収は500万位でした。
営業スタイルは営業車でのルート営業です。
既存の顧客に訪問して、新しい広告を受注してくるというのが基本的な業務でした。
飛込みではありませんでしたから、いきなり門前払いをされるということはほとんどありませんでしたので
そういった辛さはなかったです。
受注した広告を手配すると、印刷工場などで制作されるのでそれを配布したり、広告主に成果を報告するということが主な流れです。
10年もやっていると様々な失敗がありますが、
最も怒られた失敗は、書類をなくしたことでした。
その事件は顧客の重要情報が記載された書類を、顧客からお預かりし営業車に戻るときに
起きました。
書類を持って営業車を駐車していたコインパーキングに戻ってきた時にちょうど携帯電話が鳴ったのです。
まさに車に乗り込むタイミングでしたので左手で車のカギを操作し、右手で携帯電話に応答しながら車に乗り込みました。
そしてそのまま社内で一通り電話を終えた私は、コインパーキングの清算をして車を運転し営業所に戻りました。
そこで気が付いたのです。
顧客から預かっていた重要情報の書類がないのです。
慌てて車中を探しましたが見つかりません。
書類を預かってからの記憶を必死に思い返して大変なことに気が付きました。
あのとき車に乗り込もうとしたときに携帯電話が鳴り、電話に出るために右手に持っていた書類を咄嗟に車のボンネットに置いてしまっていたことを思い出しました。
私は焦りました。
当然ボンネットの上に置いたままの書類などすでになく、車を発進させたタイミングで飛んでいってしまったことは明白でした。
当時、世間でも個人情報などがやたらと取り立たされていた時代でしたから社内でも顧客の個人情報は慎重に取り扱うように、との通達が出ていたにも関わらず、
あろうことかその個人情報が記載された書類を車の上に乗せたまま走り出して紛失してしまったのです。
すぐに昼間駐車していたコインパーキングに戻って探そうかと思いましたが、すでに時刻は夜の6時。
帰りが遅くなれば不信に思われますし、もしそれで見つかればいいですが見つからなかった場合は報告が遅れたことになりさらに事態は悪化します。
私は所長に事の顛末を報告しましたが、そのときの所長の顔は今でも忘れません。
まさに鬼のような形相となり、そして
今すぐコインパーキングに行って絶対に回収してこい、回収するまで帰ってくるな
と、激怒されました。
昼間に駐車していたのが2時頃でしたからすでに4時間以上が経過していますし、なにせ紙の書類ですから少しの風でもすぐにどこかに飛んでいってしまうでしょう。
私は半べそをかきながら昼間駐車していたコインパーキングに向かいましたが、もはや見つかるはずがないと絶望していました。
ところが、奇跡が起きました。
コインパーキングについて周辺を捜しましたがやはり書類はありません。
あきらめて来た道を引き返そうとしたときにふと歩道の植え込みを見ると、なにやらクリアファイルに包まれた書類が置かれているではありませんか。
そうです。それこそ私が紛失したはずの書類でした。
どうやら、親切な方が路上で見つけたものの、どうしていいかわからず
とりあえず道のはじっこに置いておいたというような状況でした。
さきほどまで絶望していた私でしたが、一気に天にも昇る気持ちになりました。
すぐに所長に連絡して営業所に戻りました。
書類が見つかったことで最悪の事態は免れましたが、
それでも所長にはこっぴどく怒られました。
私の営業人生の中で最も恐ろしい失敗となった事件でした。
これから営業をされる方や今まさに営業職をされている方もぜひ
個人情報の取扱いには十分に気を付けていただければと思います。
私も二度と車の上には書類は置かないと心に誓いました。